人の死は突然やってきます。人が亡くなると相続が発生します。家族は、慌てふためいてしまい、何をするべきか冷静に判断できなくなります。しかし、お役所はその悲しみを癒す時間を与えてはくれません。煽られるように様々な手続きが必要になります。死亡届も相続税の納付等もすべての手続きに期限があります。今回は、死亡届から相続税の申告・納付までのタイムスケジュールをそれぞれ詳しくご説明します。
死亡から10ヵ月以内に必要な主な手続き
遺族は、死亡から10ヵ月の間に被相続人の係る届出行わなければなりません。相続税の申告・納付は大変の作業となりますので、この機会に相続税の申告・納付までの流れを確認しておきましょう。
死亡からの時間 | 手続き |
死亡 | |
7日以内 | 死亡届の提出 |
10日以内 | 受給権者死亡届の提出 -厚生年金は10日以内 -国民年金は14日以内 |
14日以内 | 健康保険・介護保険資格喪失届の提出 |
14日以内 | 世帯主変更届の提出 |
14日前後 | 公共料金などの名義変更 |
3ヵ月以内 | 遺言書の確認 相続放棄と限定承認 相続人や相続財産の特定 |
4ヵ月以内 | 死亡者の所得税の確定申告 (準確定申告) |
10ヵ月以内 | 遺産分割・相続財産の名義変更 相続税の計算 |
10ヵ月以内 | 相続税の申告・納付 |
死亡届の提出 【 死亡から7日以内 】

死亡に立ち会った医師が”死亡診断書”を作成しますが、この用紙はA3版の1枚もので、”死亡届”と明記されています。この用紙の右半分に”死亡診断書”、左半分に”死亡届”が配置されています。死亡診断書の発行に掛かる費用は、保険診療ではないので定まった価格はなく、医療機関や施設が独自に決まられる。そのため、1,000円~2万円程度までと幅があり、平均的には5,000円くらいとなっています。
死亡届の記入は遺族が行います。「死亡届」は役所の業務時間外でも受け付けてもらえますが、併せて提出する「火葬許可申請書」は時間外では対応していない自治体もありますので、ご注意ください。
この2点を提出して交付されるのが、「火葬許可書」で、火葬場に提出します。これを無くしたり忘れたりすると、火葬してもらえません。火葬後は火葬済みの印が押された「火葬許可書」が返却され、これが「埋葬許可書」となります。
なお、「死亡届」の用紙は後々色々な場面で必要となるため、提出前にコピーを取っておくと良いです。
🔹届出先:志望者の本籍地・脂肪値、あるいは届出人の所在地の市区町村役場
🔹届出人:死亡者の親族・同居人など。葬儀者の代行も可。
🔹届出に必要なもの:届出人の印鑑
受給権者死亡届(報告書)の提出 【 死亡から10日以内 】
受給権者死亡届とは、年金を受け取っている方が亡くなった時に、年金の支払いを止めてもらうために、最寄りの年金事務所又は街角の年金相談センターに提出する書類です。
この届書は年金支給先で提出期限が異なり、国民年金の場合は受給者の死亡後14日以内に提出、厚生年金の場合は10日以内に提出しなければなりません。
また、日本年金機構にマイナンバーを提出していない場合は死後も年金が支給され続けてしまう可能性があるため、速やかに届出を行う必要があります。併せて未支給年金・未支払給付金請求書も忘れずに行ってください。年金の支払い最終月は死亡した日の属する月までが対象となります。従って、年金支給の2ヵ月に一度の支給サイクルとの食い違いにより未払いになるケースも出るため、遺族が未支給年金・未支払給付金請求書を提出しないと年金を受け取れなくなります。忘れずに行ってください。
🔹届出先:手続する人の住所地の年金事務所、街角の年金相談センター
🔹届出人:遺族
🔹必要なもの:死亡診断書のコピー、死亡者の年金証書、死亡者と手続する人の住民票や戸籍謄抄本など
健康保険・介護保険資格喪失届の提出 【 死亡から14日以内 】
志望者が国民健康保険に加入していた場合、自治体によっては死亡届提出したことにより、資格喪失届を提出する必要がないが、そうでない場合は、遺族が自治体に資格喪失届を提出する必要があります。
🔹届出先:市区町村役場
🔹届出人:遺族
🔹必要なもの:死亡者の健康保険証、介護保険証、印鑑
また、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険に加入していた場合は、事業主が手続きを行います。死亡者を被保険者として被扶養者がいる場合は、全員分の健康保険証を事業主に返却し、被扶養者は国民健康保険への加入や他の家族の被扶養者になるなどの手続きが必要となります。
世帯主変更届の提出
世帯主変更届とは、世帯主が死亡した細に役場へ届け出る書類のことで、亡くなった世帯主から、新しい世帯主へと登録変更をする届書となります。15歳以上の遺族が2人以上いる世帯に提出する必要があります。
🔹届出先:市区町村役場
🔹届出人:世帯員、委任状を持った代理人
🔹必要なもの:本人確認書類、印鑑、委任状
公共料金などの名義変更
電気・ガス・水道などの公共料金やNHK受信料、固定電話、死亡者の携帯電話やインターネット契約など、生活関連の名義変更や解約などの手続きは、明確に期限が決まっているわけではありませんが、速やかに手続きした方が余計な出費を抑えることができます。
また、死亡者のクレジットカードは年会費が生じる場合もあるため、通帳や利用明細書などからカードを確認して速やかに対応しておきましょう。カード会社によっては解約するための手続き方法や必要書類が異なる場合があるので、まずはカード会社に問い合わせることが必要です。
遺言書の確認・相続人や相続財産の特定・相続放棄と限定承認 【 死亡から3ヵ月以内 】
遺言書の有無は、遺産分割に大きく影響するため、自宅などに自筆証書遺言がないか探すとともに、最寄りの公証役場で公正証書遺言が作成されているか、また法務局で自筆証書遺言が保管されていないかを確認します。
被相続人(死亡者)の出生まで戸籍をさかのぼることで、誰が相続人であるかを確定される。また、被相続人の財産を確認する場合には、銀行の通帳のほか、生命保険の証券や、金融機関からの通知書等を手掛かりにして調べ、残高証明書、固定資産評価証明書を申請する。プラスの財産だけでなく、マイナスについてももれなく確認し、相続放棄、あるいは限定承認を選択する場合は3ヵ月以内に手続きが必要となります。
*限定承認とは、被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ方法。
なお、相続に関する手続きを開始する際、「法定相続情報証明制度」の活用を検討してください。以前は法務局や金融機関などに対してそれぞれに死亡者(被相続人)の出生から死亡までの戸除籍謄本や相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書などが必要だったのですが、2017年に創設された「法定相続情報証明書制度」により手続きがかなりシンプルになりました。相続人が法定相続情報一覧図とともに戸籍書類一式を法務局に提出すると、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付され、戸除籍謄本などは返却される。この写しは無料で必要枚数の交付を受けることができるので、まとめて入手しておけば金融機関や保険会社などの手続きの際に役立ちます。
【 法定相続情報証明制度 】
🔹届出先:被相続人の本籍地等の登記所(法務局)
🔹手続する人:申出人(相続人またはその相続人)
🔹必要なもの:被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、被相続人の住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、申出人の氏名・住所を確認できる公的書類、作成した「法定相続情報一覧図」

準確定申告 【 4ヵ月以内 】
準確定申告とは死亡した人の年初から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に申告と納税をすることを言います。
準確定申告の注意点
(1) 確定申告をしなければならない人が翌年の1月1日から確定申告期限(原則として翌年の3月15日)までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合の準確定申告の期限は、前年分、本年分とも相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内となります。
(2) 相続人等が2人以上いる場合は各相続人が連署により準確定申告書を提出することになります。
ただし、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合、当該申告書を提出した相続人等は、他の相続人等に申告した内容を通知しなければならないことになっています。
(3) 準確定申告における所得控除の適用
イ. 医療費控除の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費だけとなります。
ロ. 社会保険料、生命保険料、地震保険料控除等の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額となります。
ハ. 配偶者控除や扶養控除等の適用の有無に関する判定(親族関係やその親族等の1年間の合計所得金額の見積もり等)は、死亡の日の現況により行います。
なお、 配偶者控除額、配偶者特別控除額及び扶養控除額の月割計算等は行いません。
🔹届出先:死亡者の住所地を管轄する税務署
🔹届出人:相続人
🔹必要なもの:死亡者の源泉徴収票、相続人全員の押印など
遺産分割・相続財産の名義変更
相続財産が確定した時点で、遺言書がある場合はその内容が優先され、遺言書がない場合は、法定相続人が遺産を相続します。相続の仕方は大きく分けて2通りあり、①相続人の全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割」と②法定相続分に従ったやり方です。すべての遺産をもめごとが起きない様に法定相続分に従って行えばよいのですが、例えば、不動産や銀行預金、動産、有価証券などは法定相続人が単独で処分することができません。そのため遺産分割協議が必要となるわけです。遺産分割協議がまとまらない場合には家庭裁判所へ申し立てることなります。
相続税の申告は、納税額がゼロであれば原則不要であるが、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例を適用する場合には、たとえ納税額がゼロでも申告が必要となります。
以上が相続発生から相続税の申告・納付を行うまでのタイムスケジュールとなります。皆様からのご感想をお待ちしています。またご意見お問い合わせもお待ちしています。
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