コロナ禍の家計支援に関する税制支援
子育てに係る助成の非課税措置
国や自治体からの助成金等が非課税になる
この非課税措置は2021年分以降の所得税に適用されます。今までは、ベビーシッターや認可外保育所を利用しても、国や自治体による助成措置が受けられましたが、助成金額に追加税が課されていたため、子育て支援施策の効果としては薄れてしまっていました。また、助成金は各家庭に支給されるわけではなく直接認可外保育所等に支払われるのに、税額が増える、という問題が指摘されていました。
そこで、今回の措置では子育て支援の観点から、国や地方自治体からの保育その他の子育てに係る助成金等については非課税となりました。
また非課税の対象枠が広がりました。以下がその例です。
- 認可外保育所利用料
- ベビーシッター利用料
- 一時預かり施設利用料
- 病児保育などの子を預ける施設の利用料
- 上記の助成と一体として行われる生活援助や家事支援、保育施設等の副食費、交通費等
教育や結婚・子育て資金等の一括贈与の見直し
教育資金の一括贈与を非課税とする特例措置は、30歳未満で前年の合計所得金額が1,000万円以下の子や孫一人に対し、1,500万円までの贈与を非課税とするもので、2021年3月末までの措置でした。しかし、今回の見直しにより2年間延長され2023年3月末まで利用でき、課税対象が拡大されます。
教育資金の一括贈与の特例措置
この制度は、平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に行われる子や孫に対する教育資金の一括贈与について、適用要件を満たす子や孫に、一定の額まで贈与税が非課税となる措置でした。この措置が今回の見直しにより2023年3月末まで延長されることになりました。
以下は年齢ごとの贈与税への課税についてのまとめです。延長された場合でもないように変更はありません。
- 23歳未満の場合・・・学校等以外の習い事への費用もすべて非課税となります
- 23歳以上30歳未満・・・学校等以外の習い事等の費用が非課税から除外されますが、学校等に在学中又は教育訓練給付金の支給対象訓練を受講中の場合であれば、費用は非課税となります。
- 30歳以上40歳未満・・・30歳に到達した場合でも学校等又は教育訓練給付金の支給対象訓練を受講中の場合は最長40歳まで非課税期間が延長されます。
課税対象が拡大
この度の非課税措置延長に合わせ課税対象が拡大されます。今までは、贈与者の相続税開始 (贈与者が亡くなった時点) 前3年以内に贈与された”教育資金の一括贈与”にまだ利用されていない教育資金があった場合は、その残額は贈与者(=被相続人)からの相続財産という扱いに変わり、相続財産に加算されました。この度の改正により、この「3年以内」の制限がなくなり、贈与者の死亡時点で使いきれなかった教育資金の一括贈与の残額すべてが相続財産に加算されることなります。
孫等も2割加算の対象?
祖父母から孫等に遺贈(遺言によって受けた財産)があった場合で、孫等に相続税がかかるときは、その相続税額に2割に相当する金額が加算されます(ただし、代襲相続人となった孫は対象外です)。今までは、”教育資金の一括贈与”による贈与財産の残額が相続税の対象となった場合、この2割加算制度の対象外となっていました。この度の改正では、この贈与財産の残額も、2割加算の対象となります。
教育資金の一括贈与の課税対象等のまとめ
改正前 | 改正後 | |
贈与者死亡時の相続税の課税対象 | 贈与者死亡前の3年以内の贈与に係る残額 | 贈与者死亡時における残額 |
祖父母から孫、ひ孫への遺贈に係る相続税の2割加算 | 一括贈与の特例にかかわる部分は免除 | 祖父母の死亡時の残額は2割加算の対象 |
出所:「成和3年度税制改正大綱」を基に編集作成
教育資金の一括贈与の始め方
①口座開設と資金の入金
- 「教育資金贈与」を取り扱う銀行または信託銀行で契約し口座を開設する
- 贈与者が口座に資金を入金する
- 税務署あてに申告書を金融機関経由で提出する
②教育資金の払い出し
- 受贈者が金融機関から教育資金を払い出す
- 受贈者は金融機関に領収書等を提出する
③教育資金の贈与口座の終了
- 受贈者が30歳に到達した場合(学校等に在籍中は40歳に到達するまで)
- 受贈者が死亡した場合
- 口座残高がゼロになり口座契約の終了に同意した場合(贈与金額に残高がある場合、相続財産として加算される)
結婚・子育て資金の一括贈与
結婚・子育て資金の一括贈与 とは、これから結婚や子育てをする子や孫に両親や祖父母が一人につき1,000万円まであげても、受け取った者に税金がかからないというものです。この特例措置は 2021年3月末までの措置でしたが、今回の見直しにより2年間延長され2023年3月末までとなりました。この特例も、贈与者である祖父母の死亡時までに使いきれなかった残額については、相続税の2割加算の対象となりました。
結婚・子育て資金の一括贈与の適用要件
贈与者 | 受贈者の直系尊属(父母や祖父母) |
受贈者 | 20歳以上50歳未満の者(子や孫) 前年の合計所得金額が1,000万円以下 |
贈与財産 | 結婚・子育ての支払いに充当するための金銭等 |
贈与手段 | 金銭等を金融機関に信託等する |
申告 | 受贈者は金融機関を経由して非課税申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない |
払い出しの確認等 | 受贈者は結婚・子育ての支払いに充当したことを証する書類を金融機関に提出しなければならない |
非課税限度額 | 受贈者一人につき1,000万円(結婚に際して支出する費用は300万円) |
非課税対象となる費目リスト
非課税となる費目 | |
婚礼に係る費用 | 受贈者の挙式や健康披露宴を開催するために必要な費用(会場費、衣装代、飲食代、引き出物代、写真・映像代、演出代、装飾代、ペーパーアイテム(招待状等)、人件費など) |
家賃等に係る費用 | 結婚を機に受贈者が新たに物件を賃借する際に要した費用で、賃料(契約更新後は更新後の賃料)、敷金、共益費、礼金(保証金などこれに類する費用を含む。)、仲介手数料、契約更新料 |
引っ越しに係る費用 | 結婚を機に受贈者が新たなる物件に転居するための引っ越し費用 |
不妊治療に係る費用 | 〇男女の別に関係なく、また、保険適用の有無に関係なく、以下の者が対象。公的助成を受けているかどうかに関係なく、実際に病院等へ支払った金額が対象 ・人工授精 ・体外受精 ・顕微授精 ・不妊治療に係る医薬品代(処方箋に基づき調剤されるものに限る) ・上記のほか一般的な不妊治療に要する費用 |
妊娠に係る費用 | 母子保健法に基づく妊婦検診に要する費用及び妊娠に起因する疾患の治療に要する費用・医薬品代(処方箋に基づき調剤されるものに限る。)が対象。 また、公的助成を受けているかどうかに関係なく、実際に病院等へ支払った金額が対象 |
出産に係る費用 | 〇正常分娩・流産・死産の別を問わず、出産のための入院から退院までに要した費用が広く対象となり、具体的には、出産日(死産・流産の日を含む。)以後1年を経過する日までに支払われた以下の者が対象。保険適用の有無に関係なく、出産育児一時金などの公的助成を受けているかどうかに関係なく、実際に上院等へ支払った金額が対象。 ・分娩費 ・入院費 ・新生児管理保育料 ・検査・薬剤料 ・処置・手当料 ・産科医療保障制度掛金 ・入院中の食事代 など 〇出産日(死産・流産の日を含む)以後1年を経過する日までに支払われた以下の者が対象 ・母子保健法に基づく産婦検診費用 ・出産に起因する疾患の治療に要する費用・医薬品代(処方箋に基づき調剤されるものに限る) |
産後ケアに係る費用 | 出産日(死産・流産の日を含む)以後1年を経過する日までに行われた「産後ケア」に要した費用であって、以下の者が対象。公的助成を受けているかどうかに関係なく、実際に病院等へ支払った金額が対象 ・日中のサービスまたは訪問により、心身のケアや育児サポートを行うもの(デイケア型) ・空きベッドを利用し、心身のケアや休養等を必要とする産婦に対し、母体ケアや乳児ケア、育児指導、カウンセリングなどを宿泊により実施するもの(宿泊型) |
この医療費に係る費用 | 受贈者の子(法律上の「子」(配偶者の子を養子縁組した場合、認知した場合を含む)で、小学校就学前の子に限ります。)に要した医療費であり、以下の者が対象。保険適用の有無に関係なく、また、公的助成を受けているかどうかに関係なく、実際に病院等へ支払った金額が対象。 ・治療費 ・予防接種代(任意・法定いずれも含む) ・乳幼児健診に要する費用 ・医薬品代(処方箋に基づき調剤されるものに限る) |
この育児に係る費用 | 受贈者の子(法律上の「子」(配偶者の子を養子縁組した場合、認知した場合を含む)で、小学校就学前の子に限ります。)に要した下記費用で、対象となる支払先に支払われたものが対象。また、公的助成を受けているかどうかに関係なく、実際に支払った金額が対象。 ・入園料、保育料(ベビーシッター費用も含む)施設設備費 ・入園のための試験に係る検定料 ・在園証明に係る手数料 ・行事への参加に要する費用(保護者分は対象外) ・食事の提供に係る費用 ・その他育児に伴って必要な費用(例、施設利用料・事業に伴う本人負担金など) |
結婚・子育て資金の一括贈与の始め方は、教育資金の一括贈与と同じ手続きの流れとなります。
住宅取得資金贈与の非課税措置
2021年12月31日まで非課税枠を1,500万円で延長
住宅取得等資金の非課税の特例は、20歳以上の者が父母や祖父母などから住宅の新築・取得または増改築のための資金を贈与された場合、最大1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。当初の計画では、2021年4月以降は最大1,200万円に下げる予定でしたが、2021年12月31日まで延長となりました。1,500万円の非課税枠が適用される住宅とは、省エネ性または耐震性またはバリアフリー性に適合した住宅用家屋のことを言います。
住宅取得等資金贈与の非課税の特例を受ける条件
受贈者要件
- 贈与者の直系卑属(子や孫)であること
- 贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であること
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
- 自己の配偶者、親族などの一定の関係がある人から住宅用の家屋を取得したものではないこと
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をし、居住すること、など
建物要件
- 新築、増改築ともに家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下でその半分以上が受贈者の居住用として利用されること
- 中古住宅の場合、築20年以内(耐震建築物は築25年以内)もしくは一定の耐震基準を満たすこと
- 日本国内の住宅用家屋であること、など
*受贈者の合計所得金額が1,000まんえんいかのばあいは40㎡以上240㎡以下と緩和されました。
出所:「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」(国税庁ホームページ)より編集作成
セルフメディケーション税制の延長
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、健康診断や予防接種など、健康の維持増進よび疾病予防に取り組む個人の税負担に対する配慮として、2017年に創設されました。特定一般用医薬品(スイッチOTC医薬品)などを購入し、その購入代金合計が1世帯当たり年間12,000円を超えた場合、その分を課税対象から所得控除する制度で、医療費控除との選択適用が認められます。
税制の延長と要件変更
①この制度は2021年12月末をもって終了となる制度でしたが、5年間延長されることになりました。併せて、特定一般用医薬品(スイッチOTC医薬品)の要件も変更されることになります。具体的には、スイッチOTC医薬品から医療費の適正化効果の低いものを対象外とし、効果が高いと考えられる薬効(3薬効程度)が対象に加えられました。
②手続きも簡素化されます。従来は確定申告の際、健康保持増進や疾病予防への取り組みを行ったことを示す書類(取組関係書類)として、健康診断の受診けんかなどの添付や提示が求められていましたが、今回の見直しによって、申告書の提出の際に添付すべき医薬品購入費の明細書にその取り組みに関する事項を記載することで、添付や提示が不要となります。ただし、申告期限から5年間はこれらの取組関係書類を医療費の領収書とともに保存しておき、税務署から求められた際には提出する必要があります。
適用時期:医薬品の範囲の見直しは2022年分以降の所得税、添付書類の見直しは2021年分以降の確定申告に適用となります。
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